おしべの葯の回転
〜100年に一度咲く花・葯の180度回転〜

おしべの葯が180度回転した瞬間をとらえた映像です。
およそ1分(20秒×3回)に編集しました。(size 3.1MB)

※ダウンロード後自動的に再生されますが、ダウンロードに少し時間がかかります。
それまでの間、下記の「神秘の花 リュウゼツラン」をお読みください。


Copyright(C) 2002 Masahiro Inaba in Nara University of Education


動作環境により、ご覧いただけない場合があります。ご了承ください。

 おしべは、花糸と葯の2つの部位からなりますが、リュウゼツランの場合、
花糸と葯が1点でつながっており、T字型をしています。
 開花前は、つぼみ(花被片)の中に、6本のおしべが折りたたまれて
(葯が内側を向いて)入っていますが、開花時は、おしべ(葯)が伸び出て、
花被片を少しずつ突き破り、おしべが外へ出て行きます。
 おしべが成長するにつれて、葯は、はじめは内側を向いて出てきますが、
花被片から完全に出る瞬間に、葯は、内側から外側へ180度回転します。
この映像は、おしべの葯の回転の瞬間をとらえたものなのです。





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下記原稿は、奈良教育大学同窓会 会誌「第44号」に記したものです。リュウゼツランの概要をわかりやすくまとめました。

神秘の花 リュウゼツラン

平成13年卒業  稲場 正広

  「半世紀に一度、“一気伸び”」、「ミレニアムの年にセンチュリー・プランツ」、「半世紀ぶり ぼちぼち咲こか」。これは1999年そして2000年夏、思いがけなくも2年続けて、奈良教育大学構内でリュウゼツラン2個体が花を咲かせたことを伝える新聞記事の見出しです。メキシコ原産のこの植物が日本で開花するのは大変珍しい現象でして、この花を一目見ようと学外からも大勢の見学者が訪れました。では、人々を魅了するリュウゼツランとはどのような花なのでしょうか?


 リュウゼツランを見ていてまず驚くことは、外観の雄大さと生命の神秘性です。英語ではセンチュリー・プラントと呼ばれ、一世紀(100年)に一度だけ花が咲いて枯れてしまうといわれています。しかしながら、実際のところは熱帯地域で10〜20年日本では30〜50年で開花します。学内のリュウゼツランは、およそ30年前に30株程度植えられたもので、このうち初めて2株が見事な花をつけました。


 メキシコの半砂漠のような乾燥地を原産とするこの植物には、実に興味深い多くの特徴が潜んでいます。通常は、長さ1〜2メートルもの葉が放射状に広がっており、まるでアロエを巨大にしたかのような姿を呈しています。この葉だけの状態が30年から50年続きます。その間、長い年月をかけて葉に水分や栄養分を蓄えているわけです。そして、ある日、突然、斜上する大きな葉の間から巨大な太い茎(花茎)を伸ばし始めます。開花する年の5月ごろから、1日に約10cmもの勢いで巨大な花茎をぐんぐん伸ばし続け、7月中旬には高さが7メートルにもなります。大空へ、天高く、直立するリュウゼツランの姿は、まさに『ジャックと豆の木』を連想させます。


 日本では、葉の形を竜の舌に例えたところから、「竜舌蘭」と書かれますが、この植物を目の前にすると、その名にふさわしく、竜の舌を実感することができます。原産地の北アメリカ南西部では、葉の基部から蒸留してつくるメスカル(テキーラ)という人気のあるアルコール飲料がつくられています。つぼみが膨らみ、開花したリュウゼツランの花(花被片)は薄黄緑色で、花の中央付近から伸びている黄色いおしべの葯がよく目立ちます。花の中を覗いてみると、たくさんの蜜があふれており、花盛りの花中でカナブンやハナムグリたちが饗宴の時を迎えていました。子孫を残すために原産地では、コウモリが花粉媒介の役割を担っているそうです。


 江戸時代の天保年間に日本へ渡来したリュウゼツランですが、現在は宮崎県の日南海岸や小笠原諸島に群生しています。小笠原諸島では、オガサワラオオコウモリがリュウゼツランの花蜜を採餌している姿が目撃されています。昨年、3時間おきに蜜の生産量を測定したところ、実に興味深い結果が得られました。一日の間では、18時以降の夜間に多量の蜜を分泌しているのです。このことは、リュウゼツランの花蜜が、主に夜間活動するコウモリなどの送粉者に向けられていることを示しているのではないでしょうか。


 1999年、2000年の開花期間中は、一日に100人以上もの見学者が訪れました。見学者に書いていただいた記帳用ノートには感激、感動、驚きの言葉が綴られています。夏休みの自由研究でやってきた小学生を始め、家族や友人を連れて何度も訪れた方、遠方よりはるばるやって来られた方などさまざな方がいらっしゃいました。私はこのリュウゼツランを通して、小さな子どもたちからご年配の方まであらゆる人たちとのつながりができたように感じます。ある小児科の先生は私宛にお手紙を送ってくださいました。鹿児島県にある旧制第七高等学校とリュウゼツランについて当時の思い出を綴っておられました。


 リュウゼツランが近いうちに、開花するかどうかを見極める方法が1つあります。その方法とは、下の方の葉が先端部から徐々に枯れ始めているかどうかを確認することです。もし枯れ始めているのなら、それは葉の栄養分を葉の基部へ送り、開花の準備をしていることになります。実は、2001年9月現在、この前兆が見られる株が学内(吉備塚付近)に存在しています。花は7月下旬から8月中旬にかけて約2週間、下方の枝から順に咲きますので、来年、2002年の夏には、雄大な花の光景を目にすることができるかもしれません。開花時には、是非この植物の持つ生命力や神秘性をご覧下さい。

  ↑2002年も 7月 第5週 〜 8月 第1・2週、開花しました。今後も開花の年には是非、奈良教育大学にいらっしゃってください。